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プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94(Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:(P)ウラディーミル・ヤンポルスキー 1955年5月22日録音(David Oistrakh:(P)Vladimir YampolskyRecorded on May 22, 1954)をダウンロード
- Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94 [1.Moderato]
- Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94 [2.Presto - Poco Piu Mosso Del - Tempo I]
- Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94 [3.Andante]
- Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94 [4.Allegro Con Brio - Poco Meno Mosso - Tempo I - Poco Meno Mosso - Allegro Con Brio]
暗い時代に咲いた「奇跡の明るさ」

このヴァイオリン・ソナタ第2番は、もともとはヴァイオリンのためではなく「フルート・ソナタ」として書かれました。
1942年から1943年にかけて、プロコフィエフは第二次世界大戦の戦火を避けた疎開先で、のびやかで古典的な「フルート・ソナタ ニ長調(Op. 94)」を書き上げました。
このフルート・ソナタの美しい旋律に惚れ込んだのがダヴィド・オイストラフでした。
オイストラフは「この素晴らしい曲をヴァイオリンでも弾けるように編曲してほしい」とプロコフィエフに熱烈にアプローチします。
プロコフィエフはオイストラフの助言(ヴァイオリン特有の重音やピッツィカートの追加など)を取り入れながら、1944年にヴァイオリン版を完成させました。
楽曲の構成全体は古典的な 4つの楽章 から構成されており、前衛的でトゲのあるバルトークのソナタとは対照的に、透き通った叙情性と、プロコフィエフらしい「おとぎ話」のようなユーモアが同居しています。
- 第1楽章:Moderato
冒頭からヴァイオリン(原曲ではフルート)が、どこか懐かしく、気品に満ちた美しいテーマを歌い上げます。
プロコフィエフの「新古典主義」的な側面が最もよく現れた、端正で穏やかな楽章です。 - 第2楽章:Presto
遊び心と毒気に満ちた、急速なスケルツォ楽章です。
追いかけっこをするようなシンコペーションのリズムや、中間部でのロマンティックなワルツ風の旋律など、映画音楽のようなドラマチックな展開が魅力です。 - 第3楽章:Andante
一転して、夢の中にいるような内省的で美しい緩徐楽章です。
ヴァイオリンの弱音器(ミュート)を用いた繊細な響きや、ジャズの語口を思わせるしなやかなリズムが、けだるくも心地よい空間を作り出します。 - 第4楽章:Allegro con brio
輝かしいエネルギーに満ちあふれたフィナーレです。
推進力のある力強いテーマが何度も回帰するロンド形式で、ヴァイオリンの華やかな超絶技巧(重音の連続や激しいボウリング)が炸裂します。
最後はピアノと共に圧倒的な歓喜の中、力強く曲を閉じます。
この曲が作曲された1942~1944年といえば、ソ連がナチス・ドイツとの激しい戦争の真っ只中にあった時期です。
同時期に書かれた第1番のソナタや交響曲第6番などが、戦争の恐怖や厳粛さを反映して非常に重く暗いトーンを持っているのに対し、この第2番は驚くほどピュアで、古典的な光に満ちています。
プロコフィエフは、あえて過酷な現実から距離を置き、「純粋な音楽の美」を追求することで、聴き手や自分自身を癒そうとしたのかもしれません。
まさに、暗い時代に咲いた「奇跡の明るさ」と言えるのかもしれません。
安心してバディが組める貴重なピアニスト
オイストラフにとって室内楽におけるピアニストの相棒といえばオポーリンです。
しかし、それ以外にウラディーミル・ヤンポルスキーなるピアニストとの録音も数多く残しています。
オポーリンならばベートーベンのヴァイオリン・ソナタの全曲録音が思い浮かぶので、あぁ、あの人ね…とイメージが浮かびます。
オイストラフのヴァイオリンの力強く、そして美しいヴィブラートを伴った輝かしい音色は文句なく素晴らしいです。
そして、それを支えるオボーリンのピアノは常に背筋がしゃんと伸びています。あごをグッと引いて真摯に前を見つめている眼差しが素敵です。
しかし、ヤンポルスキーとなると、これはもう全くイメージがわきません。いわゆる「Who are You」状態です。
調べてみると、オイストラフは1940年代からヤンポルスキーと組んで国内外のコンサートや録音を行っています。1955年には来日公演を行い、その時にビクターの築地スタジオで録音も行っています。
オイストラフにとってはオポーリンにも劣らぬほどの大切な相棒だったようです。
ヤンポルスキーは基本的に伴奏ピアニストなのですが、単なる従属的な伴奏者ではなくて、「ヴァイオリンの魅力を極限まで引き出す、対等かつ完璧な黒衣」であった伴奏ピアニストでした。
そして、これが肝心なのでしょうが、ピアノとヴァイオリンが対等に掛け合う場面では、一転して鮮やかで芯のあるソロ・ピアニストとしての顔を覗かせるのです。
オイストラフにとっては、いつでも安心してバディが組める貴重なピアニストだったことでしょう。