クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜


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ベートーベン: 交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67

トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1939年録音11月11日録音

  1. ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」 「第1楽章」
  2. ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」 「第2楽章」
  3. ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」 「第3楽章」
  4. ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」 「第4楽章」


極限まで無駄をそぎ落とした音楽

今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。

交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。

この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803〜4年にかけて創作されています。)

しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。

そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。

その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。

それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)

それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。

もう少し潤いがほしいかな・・・(^^


最晩年の「音楽の骸骨」を見るような演奏ではありませんが、その前兆は感じられるような録音です。確かに圧倒的な迫力は有無を言わせぬものがありますが、どこかギスギスした感じも否めません。これは、NBC交響楽団との録音には全て共通して感じ取れる特徴です。
時期的にはほとんど同じ頃なのに、イギリスのBBC交響楽団との録音ではそう言う雰囲気は全くないので、これは実に不思議なことです。

以前は録音の問題かとも思っていたのですが、昨今の復刻ではかなりの改善がされるようになり、そして、その様な良好な復刻盤で聞いてみてもやはりギスギスした感じは払拭されていません。
もしかしたら、どれほど腕のいいプレーヤーを揃えても、歴史を持たないにわか仕立てのオーケストラにはどこか決定的な欠陥があるのかもしれません。